林
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敷地は都心部の超細分化された住宅密集地にある。東側は比較的広い道路に接するが、他の3方は隣家の壁が迫っている。この小さな敷地に、4人家族のための住宅とカメが棲むための屋根を計画した。
構造は鉄骨造で、それぞれが同じ階高をもつ単純な3階建ての建物である。床面積を最大限に確保するために、建物は周囲と同様、許容建ぺい率いっぱいに建てられた。隣家との隙間はほとんどないので、道路側と3階北側の見通しのよい方向と空に向けて、必要なだけ開口部を設けた。他の通風用の小さな開口部は、隣家の窓と重ならないように注意して位置を決めた。必要条件であったカメの住処は、屋根の上に計画することになった。
室内の間取りは、眺望や採光などの面で最も条件のよい3階をリビングスペースとし、1階は半分を倉庫、もう半分をユーティリティーと浴室にした。残る2階に夫婦室と子供室2室の計3個室を設ける必要があったが、床面積の小ささゆえ、残りの必要な諸機能を個室に付け加えることで解決を行なった。このようにして、主寝室とインナーテラス、長男の部屋と収納と通路、長女の部屋と洗面所とトイレが結びつけられた。完全に仕切られず複合的な機能を持つそれらの個室は、室というよりは場と呼ぶほうがふさわしい。加えて、住人それぞれの行動の交点が個室内の各所で生じることになった。
屋根の上の環境をつくるにあたって、厚みの必要な池と植樹部分にへこみを設けた。へこみに水を張って池とし、土を入れて木を植えるようになっている。このへこみは鉄の箱でできており、3階の室内の天井面においてはでっぱりとなって現れる。何の機能も持たない、ただのでっぱりである。この建物では、屋根の自然環境を室内に取り入れることは重要でなく、環境の裏側が住人の生活に突如立ち現れ、何がしかの作用を与えることが重要であった。
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大阪の家
建築地:大阪府大阪市
設計監理:林敬一建築設計事務所 / 林敬一
施工:木村工務店
設計期間:2006年11月~ 2007年11月
工事期間:2007年11月~ 2008年 7月
主要用途:専用住宅
敷地面積:42.28㎡
建築面積:31.15㎡
延べ床面積:94.50㎡
階数:地上3階建て
構造:鉄骨造
構造設計:下山建築設計室 / 下山聡
撮影:平井美行